『衆ノ雑感』地球環境時代における持続可能なエネルギー政策を考える

日本は資源小国であり、資源の大半を海外からの輸入に頼っています。日常生活にも大きく影響する原油価格の乱高下をはじめ、政情的に不安定な中東原油依存度の高止まりが続くなか、石油・天然ガス大国であるロシアが資源の国家管理を強化し、経済発展著しい中国やインドなど新興国がエネルギー消費の増大に伴い資源囲い込みに奔走する等、世界情勢を俯瞰的な視点で捉え、国際協調を基軸としつつ、国益に合致するエネルギー政策を考えることが非常に重要となっています。また、21世紀が地球環境時代と呼ばれるなかで、地球温暖化防止京都会議(COP3)の議長国を務め、京都議定書の批准国でもある日本は、率先して持続可能な社会を実現することが求められます。さらに、2011年3月11日に発生した東日本大震災は、原子力政策を抜本的に見直す契機となっています。私は、博学篤志(博く学び篤く志す)をモットーに本ブログ「衆ノ雑感」を通じて情報発信しながら、より多くの方々がエネルギー・環境問題について関心を持っていただければ幸いと感じています。そして、掛け替えのない地球と次世代を担う子どもたちに明るい未来を引き継ぎましょう!

朝鮮半島縦貫天然ガスパイプライン構想

 2011年8月に北朝鮮の金正日総書記(当時)がロシアのメドベージェフ大統領と会談し、両国で共同の特別委員会を設置して韓国とも協議しながら、ロシアと朝鮮半島を結ぶ天然ガスパイプラインの敷設を検討することで合意しました。これに先立ち2008年9月、韓国の李明博大統領がメドベージェフ大統領との間で合意(2011年11月に再び合意)していたことから、天然ガスパイプラインの敷設に向けて地政学的リスク(北朝鮮という政治的な障害)を払拭できたと見做されています。

 

ロシア国内では、サハリン~ハバロフスク~ウラジオストク間のSKV天然ガスパイプラインが2011年9月に完成しています。また、ヤクーチャ~ハバロフスク~ウラジオストク間のYKV天然ガスパイプラインが2016年の完成を目指しています。朝鮮半島向けに延伸した場合、全長が約1100km、そのうち北朝鮮領土内の区間が約700kmとされており、天然ガス供給量100億m/年と見込まれています。北朝鮮側は、天然ガスパイプラインの敷設に出資する意向を示していないものの、領土内にパイプラインを通すことについて許可する用意があり、パイプラインに必要な用地を提供する見返りに借地料や通過料(天然ガス輸送料又は現物支給となる天然ガス火力発電所の建設)を受け取る目論見です。これまで日本と同じく船舶による液化天然ガス(LNG)輸入を基軸としてきた韓国側は、ロシア産パイプライン天然ガス(PNG)を加えた二本柱による盤石な「天然ガス・デュアル供給システム」を確立したい狙いです。中長期的な天然ガス市場形成において原油価格と連動して高騰するLNG価格に依存せず、より低廉なPNG価格を反映させたい意図が窺い知れます。

 

SKV・YKV天然ガスパイプライン

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<出所>ガスプロム

 

2003年以降、ロ韓の国営企業(ロシアのガスプロムと韓国ガス公社)が朝鮮半島向け天然ガスパイプラインの敷設主体となり、北朝鮮を迂回する海底パイプラインも含めたルート選定作業を行ってきましたが、北朝鮮による核開発や2010年3月の韓国海軍哨戒艦「天安」沈没事件、同年11月の延坪島砲撃事件等で南北関係に緊張状態が続き暗礁に乗り上げ、実現性に乏しいと判断されていました。ところが、2011年8月のロ朝会談によって北朝鮮側が前向きな姿勢を示したことから、最短ルートであるウラジオストク~北朝鮮~韓国間の朝鮮半島縦貫天然ガスパイプライン構想が急浮上した模様です。

 

朝鮮半島縦貫天然ガスパイプライン構想

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1990年にも韓国の盧泰愚大統領(当時)が訪ロした際、同行した韓国財閥の鄭周永・現代グループ名誉会長(当時)がロシア極東地方~朝鮮半島東岸~韓国の首都ソウル~釜山に至るルート(上図)をロシア側に提案しています。

 

北朝鮮は、慢性的なエネルギー不足に陥っていることから天然ガスパイプラインを拒む理由が本来ありません。しかし、北朝鮮が政情的に不安定なこともあり、近隣諸国と外交摩擦が生じれば天然ガスパイプラインのバルブを閉めるという暴挙に出ることが懸念されています。ただ、仮に暴挙に出たとしても天然ガスパイプラインによる供給量が100億m/年であり、韓国の年間消費量の5分の1程度に過ぎず影響は軽微と見られています。生殺与奪の権を握ったかのように見える北朝鮮も通過国としての信認を失い、貴重な外貨獲得手段である天然ガスパイプラインによって得られる収入(年1億~2億ドル)も放棄することとなり全く得策ではありません。また、パイプラインから天然ガスを抜き取る行為も懸念されますが、北朝鮮が天然ガスパイプラインの敷設に出資しないため、北朝鮮領土内のパイプラインはロシア(ガスプロム)の資産となります。北朝鮮がロシアの厳重な管理・監視体制のもと抜き取りを敢行することは困難でしょう。

 

そもそもパイプラインによる天然ガスの供給国と需要国とは、お互いに相手を裏切ることが出来ない性質を持っています。これをパイプラインにおける「相互確証抑制(MAC:Mutual Assured Control)」といいますが、軍事用語の「相互確証破壊(MAD:Mutual Assured Destruction)」を捩ったものです。つまり、冷戦時代に米ソが共に相手国を滅ぼすだけの核兵器を保有していたが故に、お互いに使用することを躊躇し、結果的に核戦争が起こらなかったことと同じです。移動しづらい定置の地下埋設物であるパイプラインが一旦敷設されれば供給国も需要国も簡単に相手国を変更することが難しく、相互依存関係を解消することが不可能であるため、結果的にパイプラインが政争の具とならず地域の安定装置として機能するというパラドックス(逆説)が成立します。

 

天然ガスパイプイラン網が発達した欧米では、PNGとLNGが鬩ぎ合い、柔軟かつ機動的な天然ガス貿易が展開されています。韓国は、LNG受け入れ基地と結ばれた国内の天然ガスパイプライン網が張り巡らされており、ロシアからの国際パイプラインに繋ぎ込む体制が整っています。将来、ロシアと朝鮮半島を結ぶ天然ガスパイプラインが完成すれば韓国の釜山から対馬海峡を越えて日本の九州地方北部まで延伸する計画も現実味を帯びることでしょう。そして以前、私が提唱した「エネルギー版日本列島改造論」が具現化するものと期待されます。

 

韓国の天然ガスパイプライン網とLNG受け入れ基地

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<出所>(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構

 

【以下URLもご参照ください!】

「北東アジア天然ガスパイプラインのルート選定に関する研究」

http://www.kri.sfc.keio.ac.jp/report/mori/2004/c-127.htm

原発の寿命と廃炉

東京電力福島第一原子力発電所の放射性物質漏洩事故を踏まえ、運転開始から40年を超えた原発を原則廃炉にする「40年運転制限制」をルール化します。原発の寿命を初めて法律で定めるため、『原子炉等規制法』など関連法を改正します。民主党政権は、経済産業省原子力安全・保安院や内閣府原子力安全委員会を廃止し、2012年4月に環境省の外局として原子力規制機関となる「原子力安全庁(仮称)」や同庁の原子力安全監視機関となる「原子力安全調査委員会」を設置するための根拠法と共に、原子炉等規制法の改正案を同年1月24日に召集される通常国会で提出する意向です。

 

日本に現在54基ある原発のうち、今回の事故で廃炉となる東京電力・福島第一原発1号機や関西電力・美浜原発1号機、日本原子力発電・敦賀原発1号機が既に運転40年以上となっていますが、2012年7月には、関西電力・美浜原発2号機も運転40年を超えるため合計4基となります。その後、2020年迄に18基、2030年迄に36基が寿命を迎えて順次廃炉となる見通しです。そして、最も新しい北海道電力・泊原発3号機が2049年に寿命を迎えた時点で「原発ゼロ」となります。

 

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【補足】国際原子力機関(IAEA)によると、原発の運転年数が世界平均26年(2011年末時点)で、国別平均の最長がオランダの38年、次にスイスの36年が続き、日本で世界平均並みの25年となっています。寿命とされる運転40年を超える原発は、世界に24基あり、最も長い英国のオールドベリー原発1号機で44年、次に日本の美浜原発1号機や敦賀原発1号機、スイスのベツナウ原発1号機が42年に達しています。

 

細野豪志・原発事故の収束及び再発防止担当大臣は、原発の運転期間を40年に区切る理由について、交換不能な原子炉圧力容器の耐久性を40年としている原子力事業者が多く、米国も原則として運転40年を限度としているためと主張しています。ただ、運転から40年を経過して急に原発が危なくなる明確な説明がなく、米国も40年から60年に原発の運転計画を更新しているケースが目立つなど改修によって運転を長期化する動きが広がっており、原発の運転期間を40年とする科学的根拠に乏しいことから、個々の原発で起こり得る災害や事故のリスクを徹底的に洗い出し、目安となる運転年数を念入りに精査して理論武装したうえで、原子力事業者や原発が立地する地方自治体、地域住民との協議に臨むほうが説得力もあり賢明といえるでしょう。

 

これまで原発の廃炉時期を定めた法律がなく、原発の運転を止める判断は、原子力事業者の裁量に委ねられてきました。今回、原発の寿命を原子炉等規制法に明文化することは、安全面で不安を抱える老朽原発を野放しにしないために必要な措置であると考えられます。ただ、原子力事業者から延長の申請があれば審査し、合格すれば最長で20年(運転期間60年)の延長を1回に限り環境大臣が認可する例外規定を盛り込む等、新たな原子炉等規制法が“笊(ざる)法”となる恐れがあります。また、審査する項目としては、老朽原発の高経年化(老朽化)対策や的確に施設を保全できる技術的能力等が挙げられますが、例外を認める基準が曖昧で“法の抜け道”となる可能性があり、運転期間のダブルスタンダード(二重規範)が最終的に原発の延命を常態化させる恐れもあります。

 

このほか、『電気事業法』の原発に対する「工事計画及び検査」など安全規制に該当する条文を原子炉等規制法に一本化し、『原子力基本法』に「放射線による有害な影響から人と環境を守る」と謳った基本理念を明記します。また、これまで原発の運転継続を前提に耐震バックチェック(安全確認)を実施してきましたが、地震や津波に関する最新の知見(情報・研究)を適合させるための「バックフィット制度」を新規導入し、原子力事業者の自主性に任せられてきたアクシデントマネジメント(事故発生時対応)を義務付け、違反した原発を運転停止にする法的な仕組みを構築します。ただ、メルトダウン(炉心溶融)等のシビアアクシデント(過酷事故)に耐える原発の設計や運用など総合的リスクを評価する基準が曖昧となればバックフィット制度の実効性が不透明となり、最終的に形骸化する恐れもあります。

 原発の新増設が困難となるなかで、寿命を迎えた原発から段階的に廃炉とする「縮原発」が原子力政策の主流となり、“電力ビッグバン”と呼ぶに相応しい競争的で開かれた電力制度改革が断行され、電力供給体制の再編が実現した暁には、日本で唯一の原発専業会社である日本原子力発電を国策会社(半官半民の特殊会社)に改組し、新設される原子力安全庁(仮称)や原子力安全調査委員会、そして改正される原子炉等規制法など関連法の下で、同社に全国の原発を集約して安全規制を大幅に強化するべきであると考えます。

【補足】2012年1月24日に原子力安全庁(仮称)の正式名称が「原子力規制庁」に決定しました。

電力供給体制の再編

前回、“電力ビッグバン”と呼ぶに相応しい競争的で開かれた電力制度改革を断行するため、発送電の分離(案)を提示しましたが、並行して発電所の規模や工場・オフィスビルなど販売先の種類で事業者を区分している「縦割り」の電力供給体制(一般電気事業者・卸電気事業者・卸供給事業者・特定規模電気事業者・特定電気事業者)から発電・送配電・小売の部門毎に区分する「横割り」の電力供給体制(発電会社・送配電部門を担う中立機関・小売会社)に再編することが求められます。

 

PPS1
<出所>衆ノ雑感電気料金と総括原価方式

 

電力供給体制の再編によって部門毎に発電会社と小売会社を設立することで、発電・小売部門の全面自由化を実現します。発電部門でいえば、これまで地域独占を謳歌してきた一般電気事業者である既存の電力会社は、卸電気事業者である電源開発(Jパワー)や鉄鋼・石油・化学など業界各社が新規参入している独立発電事業者(IPP)等と共に発電会社として横並びで熾烈な競争を繰り広げることとなります。また、小売部門でいえば、太陽光風力地熱など再生可能エネルギーを専門に扱う小売会社や発電所を持たずに電力市場から調達した電気を販売するマーケッターが登場する可能性もあります。

 

送配電部門については、割高な託送料や接続拒否等の参入障壁を防ぐため、「機能分離(functional unbundling)」を採用して規制を強化します。既存の電力会社が所有する送配電網を公的な性格を帯びた第三者の中立機関に委ね、静岡県の富士川から新潟県の糸魚川あたりを境に東西エリアで周波数が異なる電力系統を考慮して当初は、中立機関を東日本と西日本で各1法人設立しますが、地域間で電力を融通し易くするため将来は、周波数を統一することで中立機関も全国2法人から1法人に統合します。中立機関は、米国北東部で州を跨って送電網を運用している「地域送電機関(RTO)」や米国カリフォルニア州で送電網を運用している「独立系統運用機関(ISO)」を手本とします。

 

 RTO,ISO
<出所>米国連邦エネルギー規制委員会(FERC)

 

発電・小売部門の全面自由化と送配電部門の規制強化を組み合わせた「ドミナント規制(非対称規制)」によって安価で安全、そして効率的に安定供給するための電力システムを構築し、販売される全ての電力を、硬直化した総括原価方式に基づく相対(あいたい)契約から市場原理に基づく「日本卸電力取引所」を介して取引される仕組みに改めます。懸案事項となっている原子力発電所については、発電部門を担う民間企業の発電会社から切り離し、日本で唯一の原子力発電専業会社である日本原子力発電を国策会社(半官半民の特殊会社)に改組して全国の原子力発電所を手掛け、送配電部門と共に規制を大幅に強化します。

 

電力供給体制の再編(案)
reorganization of electric power supply organization

 

民主党政権は、福島第一原子力発電所の放射性物質漏洩事故を受け、東京電力の原子力損害賠償と経営再建を強力に進めるため、特別の法律に基づく認可法人である「原子力損害賠償支援機構」を通じて東京電力への公的資金1兆円規模の資本注入(巨額の税金投入)や電気料金の値上げを行いますが、国民の理解を到底得られず時期尚早であると考えます。今は、発電所や送電網など東京電力が保有している資産を出来る限り売却させ、債務超過に陥り法的整理されるまで自助努力によって立て直しを図るべきです。そして、電力供給体制の再編に伴いスクラップ&ビルドされた“新生東電”として発電会社の一角を占めることが健全かつ適切な選択ではないでしょうか。

“電力ビッグバン”電力制度改革

2011年3月11日に発生した未曾有の巨大地震と大津波「東日本大震災(旧東北地方太平洋沖地震)」が齎した東京電力福島第一原子力発電所の放射性物質漏洩事故を受け、計画停電(輪番停電)や電力使用制限を余儀なくされ、地域独占を前提とする電力供給体制の脆弱性が露呈しました。

 

今後、既存の電力会社が発電部門と送電部門を一体運営し、配電部門や一般家庭など契約電力50kW未満の小売部門も牛耳っている現状を見直し、“電力ビッグバン”と呼ぶに相応しい競争的で開かれた電力制度改革を断行するべきです。特に送電部門については、新規参入する発電会社が阻害されないよう透明性を高めるため、発送電の分離により送電部門が公平に発電会社を受け入れ、必要な電力を送り届ける供給義務を負うための持続可能な方策が求められます。

 

electric power supply organization 

 

具体的には、既に日本が採用している発電部門と送電部門の「会計分離」を徹底するほか、①既存の電力会社から送電部門を完全に切り離し、別資本の送電会社を設立する「所有分離」、②持ち株会社を設立して発電部門と送電部門を分社化する「法的分離」、③送電部門の運用を独立した中立機関に委ねる「機能分離」の3つから選択して切り替えることが挙げられます。会計分離は、発電から送電まで一体となった整備・運用を念頭に置いた「垂直一貫体制」のもと部門毎の財務諸表を作成し、送電網を所有する既存の電力会社に支払われる「託送料(送電網の利用料)」を定める意味合いが強く、同じ社内であるが故に発電・送電部門間の情報を遮断する「行為規制」も不十分であり、電力システムを根本的に改善するための方策としては不適です。

 

まず①の所有分離は、英国やスカンジナビア半島周辺の北欧4ヶ国(ノルウェー・スウェーデン・フィンランド・デンマーク)で採用されており、送電部門を外部へ売却していることから最も電力市場の開放が進んでいる先進的事例といえます。しかし、営利を追求し過ぎて送電会社の経営基盤が揺らげば供給義務が等閑となり、米国北東部やカリフォルニア州で起こったブラックアウト(大規模停電)のような重大なリスクを孕みます。次に②の法的分離は、フランスやドイツで採用されており、持ち株会社の傘下に発電会社と送電会社を置きますが、持ち株会社を通じて資本関係が維持されることから日本における既存の電力会社と大きな差異がありません。最後に③の機能分離は、米国カリフォルニア州で採用されており、電力危機を教訓として送電部門の規制を強化するため、中立機関である「独立系統運用機関(ISO)」が送電網の運用を行っています。日本では、送電網の所有を既存の電力会社に残したままISOと似て非なる一般社団法人「電力系統利用協議会(ESCJ)」が送電網のルール策定や監視を行っているため、本来ならば送電部門の中立性を担保すべきESCJの権限が極めて弱く、送電網の運用状況は未だにブラックボックスのままであり、ESCJも有名無実化しています。

 

【補足】フランスは、電力公社(EDF)が持ち株会社となって発電部門(発電会社のEDF)と送電部門(送電会社のRTE)を有していますが、ドイツは、アンゲラ=メルケル政権の脱原子力発電政策によって業績が急激に悪化した大手電力4社(E.ON・RWE・EnBW・Vattenfall Europe)のうちEnBWを除く3社が送電部門を外部へ売却し始めています。

 

ownership unbundling
 legal unbundling

function unbundling  

 

 現行の電力供給体制の欠点が浮き彫りとなり、既存の電力会社にとって聖域といえる送電部門を切り離すことで硬直化した電力市場に風穴を開けることが望まれます。ただ、経済活動や国民生活の土台である送電網が共用インフラ(インフラストラクチャーの略:社会資本)として機能する以上、①のような市場原理に大きく左右される送電会社では、公益事業としての責任を果たせず、責任の所在を明確にするためにも③のような中立機関に送電部門の運用を委ねることが最適です。但し、その際に既存の電力会社が持つ送電網の所有権を中立機関に移管すること(送電網の国有化を視野に入れたESCJの権限強化か日本版ISOの新設)が必須となります。電力を安価で安全、そして効率的に安定供給するため、最大の抵抗勢力となる既存の電力会社に臆することなく電力制度改革の本丸である発送電の分離を成し遂げることが肝要でしょう。

 

 unbundling

 

【補足】配電部門は、送電部門と共に運用・所有を中立機関に委ねる一方で、小売部門は、発電部門と共に全面自由化を目指して「ドミナント規制(非対称規制:送電・配電部門で支配的な既存の電力会社への制約と、発電・小売部門で劇的な新規参入条件の緩和)」を大幅に強化するべきです。

電気料金と総括原価方式

東京電力は2011年12月22日、工場やオフィスビルなど企業向け電気料金を、2012年4月から現行より2割程度の引き上げとなる1kWh当たり3円前後の値上げを発表し、物議を醸しています。燃料費が高騰した石油危機後の1980年以来となる今回の東京電力による電気料金の値上げは、個別に相対(あいたい)契約している「自由化部門」という契約電力が50kW以上の顧客が対象で、契約電力が50kW未満の一般家庭など「規制部門」のように電気料金の改定に国(経済産業大臣)の認可を必要としません。


§
東京電力の電気料金区分

 ◆自由化部門(契約電力50kW以上)

 顧客と個別に相対契約している約24万件→料金改定に国の認可が不要

 ◆規制部門(契約電力50kW未満)

 一般家庭など約2900万件→料金改定に国の認可が必要

 

東京電力は、福島第一原子力発電所の放射性物質漏洩事故を受け、代わりに稼働させる火力発電所の燃料費増が年間で約8300億円と嵩み経常赤字が続いており、東京電力が販売する電力量全体の60.6%(1778億kWh)を占める電気料金の値上げに伴い約5千億円の採算改善を見込んでいます。しかし一方で、円高や法人税負担に苦しむ製造業等には、新たな収益圧迫要因が加わることとなり、電気料金の値上げを嫌って海外に逃げ、生産拠点をアジア等に移す国内の産業空洞化に拍車を掛ける結果となり、雇用の悪化を招く恐れがあります。特に電気を大量に使う鉄鋼や化学、半導体など素材産業で影響が大きく、非製造業でも鉄道や多くのサーバーを抱える情報通信等で重荷になるなど産業界からの反発は必至の情勢です。

 

そもそも今回の値上げ前でも日本の産業用電気料金は、国際的に割高な水準にあり、1kWh当たりの単価は15.8円で、イタリアの27.6円より安いものの、米国や英国、フランス、ドイツより1~6割も高く、米国の6.8円に比べると2倍以上、韓国の5.8円に比べて3倍近い値となっています。日本の場合、『電気事業法』第19条第2項第1号の規定で「料金が能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものであること。」と謳われています。つまり、燃料費や人件費、設備費等の総原価に一定の事業報酬(利潤)を上乗せした「総括原価方式」で電気料金を決めています。これによって巨額な原子力発電所への投資等で総原価が高くなるほど利潤が大きくなり、さらに別途、火力発電所で使う燃料(原油・液化天然ガス・石炭)の価格変動や為替レートを自動的に反映させる「燃料費調整制度」で毎月の電気料金が上下しています。

 

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<出所>日本経済新聞社

 

地域独占を前提とする電力供給体制の呪縛が解かれない限り、一般電気事業者(既存の電力会社)の経営が揺らげば電気料金が値上がりし、大口需要家である企業に皺寄せが及びます。今こそ硬直化した総括原価方式を廃止し、発電事業・自由化部門で僅か4%以下のシェアしかない特定規模電気事業者(PPS)の更なる新規参入など価格競争を促して使用者が電力の購入先を自由に選べる仕組みを拡充することで、真に適正な電気料金が設定されることを希求します。

 

 PPS1

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<出所>経済産業省資源エネルギー庁

 

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卯年から辰年へ

 

行く年(2011年)は、東日本大震災が齎した甚大な被害東京電力・福島第一原子力発電所の放射性物質漏洩事故、ギリシャに端を発した欧州債務危機、そして環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉への参加表明など脱兎の如く過ぎ去った多事多難の一年でした。

 

来る年(2012年)は、内憂外患に陥った前途の見通せない暗雲を、天を目指す昇龍の如く乗り越えられるか、国内外で日本の真価が問われる重要な一年となるでしょう。皆様におかれましては、幸多き年となることを心から祈念しております。

 

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COP17と“ポスト京都”と日本

古くから高級リゾート地として知られる南アフリカ共和国のダーバンで2011年11月28日から12月11日(当初の予定12月9日)まで開催された「第17回気候変動枠組条約締約国会議(COP17)」では、温室効果ガス(主に二酸化炭素)を排出する全ての主要国が参加する新しい枠組み“ポスト京都”を2020年に発効させることで合意しました。COP17は、地球温暖化防止に取り組む京都議定書の国際協力体制を大きく転換する節目となったものの、肝心の“ポスト京都”の中身が定まらず、懸案を先送りにしただけという批判もあります。

 

COP17では、遅くとも2015年までに“ポスト京都”を採択し、2020年から発効させるほか、京都議定書の延長(第2約束期間の設定)や途上国を支援するための「グリーン気候基金(GCF)」の設立等を合意しました。“ポスト京都”には、2012年末に期限を迎える京都議定書の下で温室効果ガスの排出削減義務を負っていない中国やインド等の新興国、京都議定書から離脱した米国も参加を約束し、日本や欧州連合(EU)を含めると世界の温室効果ガス排出量の7割近くをカバーすることとなります。それ故にCOP17は、歴史的快挙として高く評価されています。

 

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COP17で合意した文書では、“ポスト京都”を京都議定書並みのlegally binding(法的拘束力)の強い枠組みにするかどうかで結論が出ず、protocol(議定書)・legal instrument(法的文書)・agreed outcome with legal force(法的な力を持つ合意された成果)と3つの形式を列挙してお茶を濁すなど玉虫色の決着を図ったため、“ポスト京都”の法的位置づけが曖昧です。COP17での合意は、各国の利害や思惑が錯綜する同床異夢といえ、“ポスト京都”の具体化に向けて今後、難航必至の情勢です。

 

京都議定書の延長は、“ポスト京都”が発効するまでの空白を避けるための緊急措置ですが、第2約束期間を5年とするか8年とするかも決まらず、実効性に欠く不公平な京都議定書で辛酸を嘗めている日本が毅然とした態度でロシアやカナダ(COP17閉幕直後に京都議定書から離脱)と共に不参加を表明したことは、理に適った判断であったように感じます。これを機に鳩山由紀夫内閣総理大臣(当時)が掲げた「2020年までに1990年比で25%削減する」という荒唐無稽な温室効果ガス排出削減目標も身の丈に合わせて見直すべきであると考えます。

 

 COP17で正式に設立が決定したGCFは、途上国の地球温暖化対策を支援する資金を用意するもので、2020年までに年間1千億ドル(約7兆7500億円)の拠出を先進国が行います。しかし、折からの金融危機や財政難から必要な資金源を確保できるかは不透明であり、基金という組織ができても財布が空に近ければ、仏作って魂入れずの状態であり、GCFが有名無実化してしまう恐れがあります。

 

COP17は、表向き実り多い成果が上がったように見えますが、実際のところ砂上の楼閣といえるでしょう。各国の足並みが揃わないまま迷走して第2約束期間に入っても国益を毀損するだけであり、日本としては、京都議定書の延長に参加しないモラトリアム(猶予期間)を与えられたことで、温室効果ガス排出削減目標を今一度再考し、“ポスト京都”の国際交渉に備えるべきであると考えます。

 

 COP17

 

【以下URLもご参照ください!】

『衆ノ雑感』山田衆三のブログ

「東日本大震災と京都議定書」http://yamada-shuzo.dreamlog.jp/archives/52070815.html

「ポスト京都議定書と京都議定書延長論」http://yamada-shuzo.dreamlog.jp/archives/51976698.html

「【対談】小池百合子・元環境大臣」http://yamada-shuzo.dreamlog.jp/archives/51934497.html

日本卸電力取引所(JEPX)

東京電力福島第一原子力発電所の放射性物質漏洩事故を受け、電力の供給不安や原発に対する意識の変化によって電気の選択への関心が高まっています。残念ながら一般家庭など小口需要家においては、電気事業法の第18条で供給義務が規定されている一般電気事業者(地域独占の10電力会社)以外に選択肢がありませんが、自家発電を行う独立発電事業者(IPP)等から売りに出された電力を、既存の一般電気事業者やJパワーなど卸電気事業者、新規参入の特定規模電気事業者(PPS)が市場原理で買い取り、それを契約電力50kW以上の企業など大口需要家に小売りする仕組みが日本卸電力取引所(JEPX:Japan electric power exchange)」で導入されています。

 

 

<出所>『衆ノ雑感』山田衆三のブログ「独立発電事業者(IPP)」

 

JEPXのあらましは、経済産業大臣の諮問機関である総合資源エネルギー調査会電気事業分科会報告答申『今後の望ましい電気事業制度の骨格について(2003年2月18日)』の主旨に基づき現物の電気の①「スポット取引(翌日に受け渡す電気の取引で、1日を30分単位に区切った48商品について取引を行う)」と、②「先渡し取引(特定期間を通じて受け渡す電気の取引で、月間の全時間帯を通じて受け渡す24時間型及び月間の特定の時間帯のみ受け渡す昼間型の2商品について取引を行う)」を仲介する卸電力取引所の運営を目的とした有限責任中間法人として同年11月に設立されました。JEPXは、一般電気事業者や卸電気事業者、PPSが余剰電力を融通し合う“電気の卸マーケット(市場)”として期待され、2004年より会員を募り、27社で2005年4月に取引を開始しました。その後、2008年11月にグリーン電力も取引を開始し、2009年の公益法人制度改革に伴って一般社団法人へと改組しました。

 

JEPXでは、2011年9月末現在の会員が53社に上り、スポット取引が大半を占めています。しかしながら、JEPXで扱われる取引量は、年間の販売電力量の1%にも満たない硬直した状態です。主な要因は、一般電気事業者がJEPXを通さず長期の相対(あいたい)契約でIPP等の電力を買い取っているためです。また、PPSは、送電網を所有する一般電気事業者に利用料を支払う「託送」という形で料金が上乗せされた電気を小売りしているため、一般電気事業者の需給調整や計画停電(輪番停電)に強制的に巻き込まれるリスクがあります。現に東日本大震災(旧東北地方太平洋沖地震)発生後の2011年3月14日以降、東京電力管内のスポット取引が停止されるなど機能不全に陥り、同年6月1日にスポット取引が再開されたもののJEPXから脱退する会員が相次いでいます。

 

 JEPX

 

北欧では、国境を越えて販売される電力全てを多国間電力取引所「ノルド・プール(Nord Pool)」経由で取引するよう義務付けています。開かれた市場が電力供給の土台であり、販売される電力の極僅かしか取引されていないJEPXの脆弱な基盤を鑑み、一般電気事業者が値下げ競争の障壁となっている長期の相対契約を減らしてJEPXでの取引量を増やし、卸電力市場を活性化させることで強固な基盤を築き上げ、JEPXを介した発送電の分離と送電網の全面開放、そして託送料の廃止が必要であると考えます。

 

【参考】

河野太郎・公式ブログ『ごまめの歯ぎしり』

「脆弱な電力取引基盤」http://www.taro.org/2011/06/post-1030.php

海洋資源調査研究船の建造


文部科学省は、レアメタル(希少金属)の一種で、自動車のほか半導体や光学製品など日本が強みとするハイテク産業に不可欠なレアアース(希土類)等、日本列島の近海に眠る海洋資源を探査するため、2012年度から海洋資源調査研究船の建造に乗り出します。海洋資源調査研究船の建造に総額220億円を投じて4年後に完成させ、高精度センサーを搭載し、複数の無人探査機を同時に操り、海洋資源の賦存量や分布等を広範囲に亘って把握します。

 

文部科学省では、海洋資源調査研究船や無人探査機、掘削技術を開発・整備すると共に、海洋資源の成因等を明らかにして戦略的な探査手法を確立し、領海・排他的経済水域(EEZ)に存在する豊富な海洋資源の確保を推進する「新規海洋資源開拓基盤開発プロジェクト」として、2012年度予算案の概算要求に67億5600万円を盛り込んでいます。海洋資源調査研究船の運用は、文部科学省所管の独立行政法人である海洋研究開発機構(JAMSTEC)が担当し、世界初の深海探鉱ロボット開発に着手している経済産業省所管の独立行政法人である石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)とも連携します。

 

 EEZ

<出所>海上保安庁

日本は、国土面積が世界第61位(38万km)と狭隘ですが、領海・EEZを足せば一気に世界第6位の面積(447万km)に大躍進する海洋国家です。

 

海洋資源調査研究船は、まず音波等を使って海底下の構造を掴みます。次に自律型の無人探査機(AUV:Autonomous Underwater Vehicle)が海底から高さ100~200mを進み、電磁波を海底に照射する等で海洋資源の有無を調べます。AUVによって得られたデータは、リアルタイムで海洋資源調査研究船に送信され、海底下にレアアース等があると判断すれば本船から遠隔操作できる別の無人探査機(ROV:Remotely Operated Vehicle)が海底に降下して試料を採取し、周辺の画像を撮影します。JAMSTECは現在、地球深部探査船「ちきゅう」をはじめ8隻の船舶を保有していますが、1回の航海で1機しか無人探査機を使用できません。新たに建造する海洋資源調査研究船では、複数の無人探査機を同時に動かせ、広い範囲のデータを効率よく収集できるようにします。

 

新規海洋資源開拓基盤開発プロジェクトの概要

 marine-resources exploitation

<出所>文部科学省

船上のセンサー等による概略調査→AUVによる精密調査→ROVによるサンプリングなど海洋資源調査の一連の流れ全体を1隻で実施できる機能を備えた海洋資源調査研究船の建造が眼目です。

 

世界のレアアース生産量の9割以上を独占的に掘り出し、レアアース市場を牛耳っている中国が輸出規制を続けており、価格高騰や調達難が懸念されるなか、未知なるフロンティア(開発対象)である海洋資源の商業化に向け、四方海に囲まれた島国・日本が最先端技術の粋を結集して建造する海洋資源調査研究船で大海原へと出来るだけ早く就航し、“我が国の至宝”と呼べる純国産レアアースを発見することに期待します。

 

【以下URLもご参照ください!】

『衆ノ雑感』山田衆三のブログ

「フリーフォール型深海シャトルビークル『江戸っ子1号』開発」
http://yamada-shuzo.dreamlog.jp/archives/52155750.html

「無人深海実験棟と『深海ワンダー』」http://yamada-shuzo.dreamlog.jp/archives/51510053.html
「日本初の三次元物理探査船『資源』」http://yamada-shuzo.dreamlog.jp/archives/51509968.html

災害対応型給油所

東日本大震災の教訓を踏まえ、石油元売り大手のJX日鉱日石エネルギーや農業協同組合(JA)の全国組織である全国農業協同組合連合会(JA全農)は、給油所の燃料調達を強化すると共に、防災拠点として活用することを想定し、津波など災害時に機能する「災害対応型給油所」を整備します。

JX日鉱日石エネルギーの災害対応型給油所は、投資額が通常(約1億円)の1.5倍と格段に割高となるものの、給油スペースの屋根のほぼ半分の面積に出力10kWのソーラーパネルを張り、津波で冠水の被害を受けても早期に営業再開できるよう給油機を防水型とします。また、事務所を鉄骨2階建てにし、併設の作業棟2階に停電時でも給油や店内照明の電気を賄える出力70kWの非常用自家発電機や自立分散型電源の小規模な燃料電池を置き、生活用水の井戸から汲み上げた水で燃料電池によるお湯を作り、貯水槽に飲料水を約4kL常備しておくほか、携帯電話の充電機器も揃えるなど給油以外のサービスを提供します。さらに、高さ約7mの屋上には、従業員や周辺住民が津波で逃げ込める30~40人の一時的な避難場所を確保します。JX日鉱日石エネルギーは、2012年3月に被災地である宮城県石巻市の店舗を改装して第一号となる災害対応型給油所を開業する予定で、津波の襲来が予測されている東北~九州地方の太平洋側の沿岸11地域にも災害対応型給油所を2013年度までに各1ヶ所ずつ導入する見込みです。JX日鉱日石エネルギーでは、先行事例となる12ヶ所での性能や運用実績を見極めたうえで、系列特約店にも災害対応型給油所の仕様を公開し、広く採用を呼び掛ける方針です。

災害対応型給油所の完成予想図
 
JX
<出所>JX日鉱日石エネルギー

JA全農の災害対応型給油所は、投資額を通常の3分の1程度の3千万円以下に抑えた簡易なもので、セルフ式の給油機を1台設け、ハイオク(高オクタン価ガソリン)を扱わず、支払いもクレジットカードのみにして投資額を大幅に削減しました。2011年11月に被災地である宮城県南三陸町で第一号の災害対応型給油所を開業、全国のJAに提案し、今後2年間で50ヶ所の災害対応型給油所を整備します。JA系の給油所は、全国に約3千ヶ所あり、大手元売り系の給油所が存在しない農村部にも数多く展開していますが、廃業を選ぶ給油所が増えている給油所過疎地にとっては、災害対応型給油所の整備が起死回生の好機となるでしょう。

そもそも給油所の在り方そのものが過渡期にあり、ガソリン車から電気自動車(EV)に主流が移行する将来を見据えると、災害対応型給油所を更に進化させることが肝要でしょう。つまり、EVが大半を占める車社会では、災害時にEVのバッテリーが切れて電気を使い果たす“電欠車(ガソリン車でいう「ガス欠車」)”となって道路を塞ぐことで、緊急用の道路が完全に麻痺して救援も復旧も滞ってしまう恐れがあることから、ガソリン車の給油所をEVの充電所にリプレース(置き換え)することを念頭に置いて対応すべきであると考えます。

【以下URLもご参照ください!】
『衆ノ雑感』山田衆三のブログ
「製油所閉鎖時代の到来」http://yamada-shuzo.dreamlog.jp/archives/51976279.html

【東京都VS.東京電力】電力供給を巡る戦い

前回、東京都など首都圏の主要な地方自治体(9都県市が受け皿となって千葉県から神奈川県に至る東京湾岸一帯の天然ガス火力発電事業に投資する「官民連携インフラファンド(通称:PPPインフラファンド)」を紹介しましたが、東京都は、発電事業だけでなく2014年度を目途に東京電力から独立した自前の送電網を臨海副都心に整備し、電力供給事業にも参入します。

 

東京都は、出力1.6万kW級(7800kW規模2基)の発電施設を運営する民間事業者を公募し、天然ガスを燃料としたコージェネレーション(熱併給発電)を導入するため、設備導入費の一部を助成します。東京都の支出は、全体で数十億円程度になる模様です。また、東京都は、江東区・港区・品川区を跨ぐ臨海副都心442haの地区内に総延長6kmの送電線を敷設し、臨海副都心の地下にライフライン(生活物資補給路)となる水道管やガス管等を纏めて収納する「共同溝」が埋設されていることから、この中に送電線を敷くことで投資額を約6億円に抑えます。都内では、森ビル系の特定電気事業者である六本木エネルギーサービスが自前の送電線を使って大型複合施設の六本木ヒルズ(港区)に電力を供給している例がありますが、東京都が送電網を張り巡らせることで供給先を点から面に広げる目論見です。まず2014年度を目途に東京ビッグサイトや東京テレポートセンターなど東京都の第三セクターが運営する約10の施設とテナント、青海コンテナ埠頭等に電力を供給し、これらの電力需要の4割程度を賄う見込みです。次に2015年度以降は、発電能力を倍増(最大3.1万kW級)し、首都直下地震等で被災した帰宅困難者の受け入れなどを条件として民間ビルにも電力を供給します。さらに、東京都は、整備した自前の送電網を無料で利用できるようにし、東京電力に託送料を支払わずに済むため、電気料金を下げる効果があるほか、民間事業者の発電施設にトラブルが生じて電力供給が滞っても東京電力から緊急調達できるようバックアップを施します。

 

tokyo

 

東京都は、東京電力の送電網を敢えて使わず、民間事業者の発電施設から臨海副都心のオフィスビル群に直接電力を送ることで、地震や津波など大災害によって東京電力からの電力が途絶えても安定供給できる堅牢な体制を築くと共に、送電網という電力会社が事実上支配している既得権益化された“聖域”に風穴を開けることとなります。

 

 神奈川県や大阪府など地下に共同溝を所有している都市圏の地方自治体は、周辺にオフィスビルが林立しています。東京都が共同溝を活用した自前の送電網を武器に、東京電力との電力供給を巡る戦いに勝利することとなれば電力会社による地域独占が崩れ、北海道電力から九州電力管内まで群雄割拠の時代に突入し、電力市場の完全自由化(発送電の分離と送電網の全面開放)が一気に実現する可能性もあるでしょう。
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