2009年10月11日に総合テレビで放送されたNHKスペシャル『原発解体?世界の現場は警告する』を視聴し、将来の原子力政策を俯瞰するうえで大変興味深いドキュメンタリーであったので、感想など報告したい。
今日、地球温暖化が深刻化するなかで、先進国や途上国、特に経済発展著しい中国・インドなど新興国では、急増するエネルギー消費の安定供給に向けた資源争奪戦が激化しており、石油や石炭など化石燃料による火力発電に比べ温室効果ガスである二酸化炭素を殆ど排出せず発電出力の大きい原子力が注目されている。1986年に発生した旧ソ連(現:ウクライナ)のチェルノブイリ原発事故以後、脱原発を掲げてきた欧米の政策は転換期を迎え、既述の新興国のみでなく中東産油国でさえも原発新増設に舵を切り、まさに原子力ルネサンスの様相を呈している。
原発が新増設される一方で、初期に造られた原発は運転を終え、これまでに世界で閉鎖された原発は100基以上、原発先進国である日本、ドイツ及び英国等では解体ラッシュが始まろうとしている。日本では、国内初の原発であった東海発電所(茨城県東海村)と、新型転換炉のふげん発電所(福井県敦賀市)が解体に着手し、NHKの取材班は、マスメディアとして初めて原発解体の現場に密着した。

運転期間は、東海発電所が1966?1998年、ふげん発電所が1979?2003年である。特に東海発電所については、原子炉本体の解体が2011年と間近に迫っている。
未知の領域である原発解体では、放射能という眼に見えない有毒物質の外部漏洩や労働者の被曝を防ぐため、一般の建物にはない特殊な環境下で安全第一を念頭に置いて作業を行っているものの、そもそも原発は、解体を前提に建設されておらず地震等に備え頑丈で、原子炉本体の放射化(核燃料から出る中性子に晒されたため、金属の性質が変化し、自ら強い放射能を持つ現象)も厄介である。また、原発建設時に作成された図面が古くなって汚れ、文字や数値が見づらいうえ記載に不明瞭な点もあり、保管義務のない図面が現存していないケースもあって当時の建設工事担当者に尋ねる等、現代科学の粋を結集した遠隔操作によるロボットなど最先端技術を駆使しても、これら事前の想定を越える困難な壁が立ち塞がり、予定通りの工程で作業は進展せずに時間と費用のみが嵩んでいる。同じような状況がドイツや英国でも起こっている事例と併せて紹介された。そしてNHKは、原発解体で発生する大量の放射性廃棄物に伴い発電所敷地内の貯蔵施設は逼迫し、地域住民の反対もあって地下深くに埋設する最終処分地の誘致先も決まっていないと指摘したうえで、「人類が原発を手にしてから半世紀。世界で539基ある原発。その全てがいずれ解体され廃棄物となる」と言うナレーションで番組を締め括った。
放射性廃棄物の最終処分地イメージ

<出所>原子力発電環境整備機構
民放に先んじて公共放送のNHKがあまり世間で知られていない原発解体に光を当てたことは高く評価したい。ただ、人が住む環境に影響を与えないよう世代を超えて否応なく取り組まざるを得ない原発の廃炉問題や放射性廃棄物の管理・処分に対し、原発解体が困難を極め危険だからといって放置したままで廃墟にしておく訳にもいかず、現実を直視して国民が今後どのように原発と向き合っていくべきか等の建設的なメッセージは一切なく、世界規模で増え続けるであろう原発への恐怖と不安を扇動する後ろ向きなネガティブキャンペーンに終始したところが残念であった。
【参考】「衆ノ雑感」で取り上げた過去の関連記事
・プルサーマル発電 http://yamada-shuzo.blog.drecom.jp/archive/137
・出力向上原発 http://yamada-shuzo.blog.drecom.jp/archive/132
・高レベル放射性廃棄物 http://yamada-shuzo.blog.drecom.jp/archive/46
・プルサーマル発電 http://yamada-shuzo.blog.drecom.jp/archive/137
・出力向上原発 http://yamada-shuzo.blog.drecom.jp/archive/132
・高レベル放射性廃棄物 http://yamada-shuzo.blog.drecom.jp/archive/46
