世界経済の発展による国際貿易の増加に伴い貨物輸送を行う船舶数も増えるなか、持続可能な社会を見据えた運輸部門における温室効果ガス(二酸化炭素)削減に向け、大手海運会社である日本郵船(株)は、環境と調和した船舶として「スーパーエコシップ」を考案している。
スーパーエコシップのイメージ


<出所>日本郵船(株)
スーパーエコシップの模型(上図)。強風時に折り畳み式の丸みを帯びた8枚の羽と三角形の帆を広げ、揚力で加速航行する。薄型の透明な材質で柔らかく折り曲げ可能な太陽電池を一面(3万1千m2)に貼り付け、剥き出しのコンテナを包み甲板を覆うことにより船体が流線型に近づき空気抵抗を減らすこともできる。
2030年を目標に、未だ商業化されていない技術を随所に盛り込み、“NYKスーパーエコシップ2030”と命名された未来の船舶は、(1)超高張力鋼など新素材を用いて船体重量を2万7500t軽量化、(2)多目的プロペラを駆使して船体と海水の間に空気の泡を流すことで摩擦抵抗を軽減、(3)環境負荷が大きいC重油を使ったディーゼルエンジンを化石燃料のなかで最もクリーンな液化天然ガス(LNG)から水素を抽出する燃料電池に代替、(4)太陽光・風力など自然エネルギーから推進力を獲得することにより、1コンテナ当たりの二酸化炭素排出量を現在の船舶と比較して約69%削減することが可能という。また、荷役のスピードアップを図るため分割可能とした船舶の需要に応じてエネルギーを供給できるよう搭載される燃料電池は、コンテナ内に格納、コンテナの揚げ降ろしと同じく各港でモジュール(交換可能な機能単位)化するなど既成概念に拘らない斬新な発想となっている。
現在の船舶との比較(NYKスーパーエコシップ2030の積載量である8千TEU型の場合)

TEUは、積載能力を示す単位で、Twenty-foot Equivalent Unitsの略称。1TEUは、20フィートコンテナ1個分に相当する。

<出所>日本郵船(株)
NYKスーパーエコシップ2030の多目的プロペラのイメージ

NYKスーパーエコシップ2030の分割可能な船舶のイメージ

<出所>日本郵船(株)
日本郵船(株)は、2050年の二酸化炭素ゼロ・エミッションを目指し、中間地点である2030年に建造するNYKスーパーエコシップ2030を子会社の(株)MTI(モノハコビ・テクノロジー・インスティチュート)、フィンランドの船舶技術コンサルタント会社Elomatic Marine(エロマティック)及びイタリアのデザイン会社Garroni Progetti S.r.l.(ガローニ)と共同で設計した。これは、長期的な要素技術の動向を検討し、継続して取り組むべきロードマップ(未来予想図)を作成することで、港湾や海洋物流の将来を広く国民が考えるきっかけになりたい、また、次世代を担う若者に海運の仕事に興味・関心を持ってもらいたいという強い願いが込められている。今は時期尚早で夢物語や蛮勇と思われるかもしれないが、自動車・航空機・鉄道からモーダルシフト(輸送手段の切り替え)する受け皿となり得るスーパーエコシップを絵空事で終わらせない日本郵船(株)の高い気概と矜持に深い感銘を受けた。
スーパーエコシップのエネルギー転換ロードマップ

<出所>日本郵船(株)
【補足】(株)商船三井は、日本郵船(株)に対抗して航行中の二酸化炭素排出量を最大で50%削減する次世代自動車船を開発する。2014年を目処に完成させ、順次フェリーやばら積み船・タンカー、コンテナ船等に広げる計画で、社運を賭けた「船舶維新」に由来する“ISHIN―?(イシン・ワン)”と名づけた。太陽光パネルを上甲板のほぼ全面に設置し、大容量の蓄電池であるリチウムイオン電池を搭載、風圧・摩擦抵抗やプロペラ、運航支援システム、機関システム、船体設計等を大幅に見直すことで二酸化炭素排出量を41%削減する。さらに、2014年のパナマ運河の拡張で自動車船を大型化すれば50%削減も可能という。

<出所>(株)商船三井
【参考】「衆ノ雑感」で取り上げた過去の関連記事
・燃料電池鉄道 http://yamada-shuzo.blog.drecom.jp/archive/166
・高速道路の無料化 http://yamada-shuzo.blog.drecom.jp/archive/161
・持続可能な交通政策 http://yamada-shuzo.blog.drecom.jp/archive/58
・燃料電池鉄道 http://yamada-shuzo.blog.drecom.jp/archive/166
・高速道路の無料化 http://yamada-shuzo.blog.drecom.jp/archive/161
・持続可能な交通政策 http://yamada-shuzo.blog.drecom.jp/archive/58
