2009年12月7日からデンマークの首都・コペンハーゲン市で開催される第15回気候変動枠組条約締約国会議(COP15)を控え、2013年以降の地球温暖化対策の国際枠組み「ポスト京都議定書」交渉に臨む主要各国の温室効果ガス排出削減中期目標(以下、中期目標)が出揃った。

 

京都議定書の約束を引き継ぐポスト京都議定書の交渉期限であるCOP15では、鳩山由紀夫内閣総理大臣をはじめ欧米アジアの首脳が一堂に会し、法的拘束力のある新たな議定書の採択は難しいものの、ポスト京都議定書の大枠を固めて政治合意する方向でほぼ一致している。世界の温室効果ガス排出量の4割を占める米国と中国の動向が注目されているなか、米国は、2020年までに2005年比で17%削減、中国は、国内総生産(GDP)当たりの温室効果ガス排出量を2020年までに2005年比で40~45%削減する中期目標を掲げた。日本が2020年までに1990年比で25%削減する中期目標を掲げている一方で、米国の中期目標は、1990年比に換算すると3%削減足らず、中国の中期目標は、温室効果ガス排出の絶対量を減らす排出削減目標ではなく、単位GDP当たりの排出抑制目標であり、今後の経済成長を制約しないように予め配慮されている。つまり、2009年以降に中国の名目GDPが年5%以上増加すると仮定すれば、既述の中期目標を達成したとしても、温室効果ガス排出の絶対量は、2020年に2005年比で6割以上増えてしまう計算となる。中国と同様に新興国であるインドもGDP当たりの温室効果ガス排出量を2020年までに2005年比で20~25%削減する中期目標を検討している。

 

世界各国の温室効果ガス排出量の内訳
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地球温暖化対策に積極的とされている欧州連合(EU)の中期目標は、1990年比で20~30%削減であるものの、1990年以降に石炭から天然ガスへの燃料転換や省エネルギーが遅れていた東欧諸国がEUに加盟しており、比較的容易に温室効果ガス排出量を減らすことができ、日本と事情が全く異なる点で留意が必要である。また、ロシアについては、日本と同じく1990年比で25%削減する中期目標を掲げているが、これは数字のトリック(策略)で、ロシア国内で見れば温室効果ガス排出量を現状より1割増やしても達成できる水準となっている。このほか、豪州は、2000年比で5~25%削減の中期目標を掲げているが、1990年比に換算すれば13%増加~11%削減、2006年比で20%削減の中期目標を掲げているカナダも1990年比に換算すれば3%削減等、日本が掲げた中期目標の高さだけが際立っている。


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先進国間で中期目標の公平性に欠けている点について、大学院修士課程在学中に大変お世話になった慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科客員教授の茅陽一先生が副理事長兼研究所長を務める(財)地球環境産業技術研究機構(RITE)の試算によれば、日本が25%削減を達成する場合、二酸化炭素換算で1t当たり476ドルの費用負担となり、同じコストを投じれば、米国で44%削減、EUで39%削減、ロシアで59%削減が可能であるという。既に省エネルギーが進んでいる日本は、温室効果ガス排出量を減らす費用が他国より高く、それだけ重い負担を強いられることとなり、無理やり25%削減を達成しようとすれば国際競争力の著しい低下や国内産業の空洞化等が懸念される。以前、「衆ノ雑感」温室効果ガス排出削減中期目標でも述べたとおり25%削減は、民主党政権が実現可能性を見極めずに奇を衒って高い数値を打ち出した荒唐無稽な中期目標であるとしか思えない。

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<出所>RITE

 

ポスト京都議定書の国際交渉で最も難航するのが先進国と途上国との調整である。これから経済発展を成し遂げようとする途上国からすれば、地球温暖化問題は、産業革命を端緒とした過去100~200年間の先進国の工業化が招いた結果であり、まず先進国が大幅な温室効果ガス排出削減目標を示すべきという立場である。特に中国・インドなど新興国は、地球温暖化対策について「共通だが差異のある責任」の原則に基づき中期目標を自発的な行動にするべきとの主張であり、先進国から要求されている中期目標の義務付けに猛反発しているほか、先進国全体の中期目標が1990年比で16~23%削減になることについて、2007年にノーベル平和賞を受賞した気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が第四次報告で先進国に対して25~40%削減の中期目標を示しており、相当な開きがあることから更なる上積みを要求している。

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以上、各国の中期目標は、基準年や設定条件がバラバラで取り組みへの温度差も激しく、25%削減を掲げた日本のみが突出した形となっている。今後、先進国間、先進国と途上国間でどれだけ地球温暖化に対する危機感を共有でき溝を埋められるか、また、日本が同床異夢の国際交渉の場で国益を毀損することなく主導権を握りリーダーシップを発揮できるか、ポスト京都議定書を巡る駆け引きは、なお予断を許さない。