『衆ノ雑感』地球環境時代における持続可能なエネルギー政策を考える

日本は資源小国であり、資源の大半を海外からの輸入に頼っています。日常生活にも大きく影響する原油価格の乱高下をはじめ、政情的に不安定な中東原油依存度の高止まりが続くなか、石油・天然ガス大国であるロシアが資源の国家管理を強化し、経済発展著しい中国やインドなど新興国がエネルギー消費の増大に伴い資源囲い込みに奔走する等、世界情勢を俯瞰的な視点で捉え、国際協調を基軸としつつ、国益に合致するエネルギー政策を考えることが非常に重要となっています。また、21世紀が地球環境時代と呼ばれるなかで、地球温暖化防止京都会議(COP3)の議長国を務め、京都議定書の批准国でもある日本は、率先して持続可能な社会を実現することが求められます。さらに、2011年3月11日に発生した東日本大震災は、原子力政策を抜本的に見直す契機となっています。私は、博学篤志(博く学び篤く志す)をモットーに本ブログ「衆ノ雑感」を通じて情報発信しながら、より多くの方々がエネルギー・環境問題について関心を持っていただければ幸いと感じています。そして、今を生きる現世代の我々が次世代を担う子どもたちに掛け替えのない美しい地球と明るい未来を引き継ぎましょう!

そのほか

国際離婚とハーグ条約

グローバル化の進展に伴い結婚する日本人の20組に1組が外国人との国際結婚となっている一方、外国人との結婚の破綻、つまり国際離婚も1992年の7700件から2009年に1万9400件と軒並み増加の一途を辿っています。国際離婚が成立した際、国家間の不法な子ども連れ去りを抑止することを目的に1980年に採択され1983年に発効した『国際的な子の奪取の民事面に関する条約』、オランダのハーグ国際私法会議で採択されたことから通称『ハーグ条約』について、日本の加盟を巡り推進派と慎重派で国内を二分する大論争が巻き起こっています。

 

 kekkon or rikon
<出所>厚生労働省「人口動態統計」

 

推進派は、国際離婚時に一方の親が子どもを無断で海外へ連れ去り、もう一方の親に子どもを面会交流させないなど拉致紛いのトラブルが発生していることから、ハーグ条約が解決に向けた国際ルールとして重要な役割を果たすものと期待しています。ハーグ条約では、加盟国間で親が海外へ子どもを連れ去った場合、迅速に子どもの返還(連れ戻し)を請求でき、身勝手な親による子どもの連れ去り抑止に寄与します。また、ハーグ条約は、欧米など先進国を中心に84の国と地域が加盟しており、日本人がハーグ条約に関係したケースも外務省公表ベースで64件に上っていることから、先進国である日本がハーグ条約に加盟していないことは相応しくないという見解です。

 

ハーグ条約に加盟した外国で離婚した日本人が外国人の元配偶者に無断で子供を日本へ連れ帰った場合、子どもが「奪取」されたにも係わらず日本がハーグ条約に加盟していないため、子どもの返還を請求することが難しく“逃げ得(連れ去り勝ち)”になることが問題視されているほか、日本へ「奪取」された子どもに対する救済手段もないため、子どもを連れ去られた側が泣き寝入りを強いられることから、国際離婚時に外国の司法当局は、現地の日本人に親権を与えることに慎重にならざるを得ない事情があります。

 

 the Hague Convention


 慎重派は、日本がハーグ条約に加盟すると子どもへの虐待などドメスティック・バイオレンス(DV)被害等に遭った子どもの身の安全を確保するため日本へ命辛々連れ帰った場合でさえ相手国から子どもの返還請求があれば強制的に連れ戻されることになり、子どもが再びDV被害等の危険に晒されることから、DV被害等に遭っている親子にとって理不尽な仕打ちとなることを懸念しています。DVを犯した非道な元配偶者からハーグ条約を根拠に「子の奪取」と訴えられ誘拐犯として国際指名手配された挙句、何の罪もない子どもを“強制送還”せねばならない悲劇が起きる訳です。また、ハーグ条約に当初から加盟しているスイスでは、スイス人の妻と豪州人の夫との国際離婚トラブルで、スイス人の妻と平穏に暮らしていた子どもの返還を申し立てた豪州人の夫に、妻が已むなく子どもをハーグ条約に従って戻したところ、夫に養育能力がなく、子どもが里親に育てられている事実が発覚し、ハーグ条約の運用上の欠陥を露呈しました。

 

子どもに重大な危険が及ぶ場合は、例外的に返還されないという規定がハーグ条約の第13条第1項bにあるものの形骸化しており、実際はDV被害というべき事案であっても、返還の例外と見做されない厳しく過酷な現実があります。これには、慣れない外国の裁判所に訴える法的手続きやDV被害を立証する難しさも影響しています。縦しんば裁判となっても、言語の壁や日本への偏見、高額な弁護士費用など金銭的負担が嵩み、子どもの親権を奪い返すことは至難の業です。そして何よりも、特に欧米において離婚しても共同親権(子どもを両親で育てること)が良いという慣習があり、日本で当たり前の単独親権(母親が育てるケースなど両親から子どもを切り離すこと)は違法と解釈されることが多いため、日本人親が裁判で勝訴する可能性は低いと見られています。よって、現行のハーグ条約に、日本が加盟することのみを強く求められるまま“外圧”に屈する形で受け入れることを憂慮しています。

 

ハーグ条約未加盟によって子どもの連れ去りを助長し、親子の自由な面会交流を妨げて子どもの権利侵害に繋がると主張する推進派と、ハーグ条約未加盟によってDV被害等から保護されていると主張する慎重派、真っ向から対立する双方の主張を斟酌すれば現行のハーグ条約に加盟することは拙速で時期尚早といえるでしょう。日本では、外務省が2009年に「子の親権問題担当室」を設置し、ハーグ条約に関係した日本人から日本のハーグ条約加盟についてアンケート調査を実施したところ、賛成22件(56%)・反対17件(44%)と賛否両論が拮抗する結果となりました。その後、米国やフランスが相次いで日本のハーグ条約早期加盟を決議したことを受け、そのまま棚上げにすれば外交上の火種になりかねないと焦った民主党政権は、ハーグ条約への加盟を2011年5月20日に閣議了解しており、5月26日からフランス北西部のドービルで開催される主要国(G8)首脳会議(サミット)で米国やフランスなど各国首脳に加盟の旨を伝え、今秋の臨時国会で承認を得たい考えです。

 

まずは、ハーグ条約の実態把握と運用上の欠陥を洗い出し、次に、ハーグ条約を補完するための国際離婚におけるDV被害等に関する特別措置法や国際離婚後に共同親権を行使するための民法改正(但し、日本人の家族観が損なわれる可能性に留意を要する)など国内法を整備してからハーグ条約加盟への国際交渉を慎重に進めていくべきであると考えます。並行してハーグ条約加盟後の相談窓口となる専門家の育成や国際結婚する日本人にハーグ条約の存在を認識させ注意喚起する広報活動も必要です。ただ、如何してもハーグ条約の全文に納得できず受け入れ難いとなった場合には、高度な政治判断を迫られることから、2003年に米国とエジプトが二国間で締結した事例等を参考に、国際離婚の件数が多い米国等と個別にハーグ条約に類似した取り決めやルール作りを行っていくなど柔軟な姿勢で対処することが妥当であるように感じます。

東日本大震災とベキ分布の教訓

 2011年4月23日付け日本経済新聞の朝刊に興味深い記事(15面マーケット総合2『大機小機』)がありましたので抜粋して紹介したいと思います。


 「未曽有の災害をもたらした今回の大津波、そしていまだに完全な解決への道筋がはっきりと見えない原子力発電所の事故について、よく『想定外』という言葉を耳にする。(中略)リスクを適切に評価するためには、対象となる現象を確率的な事象として考え、何らかの確率分布を『想定』する必要がある。想定外という時には、そうした想定に問題があったことになる。自然・社会現象のリスク評価に関して半世紀にわたり警告を発し続けてきたのは、フラクタル幾何学の創始者で昨年10月に亡くなった数学者マンデルブローである。科学者が想定する確率分布の中で200年間君臨してきたのは、身長の分布などでおなじみの『正規分布』だ。正規分布ならば平均と標準偏差によってリスク(まれな事象が起きる確率)を正確に評価できる。しかし自然・社会現象の中には正規分布で表せない現象、特に『ベキ分布』という確率分布に従う現象が多数存在することをマンデルブローは強調した。ベキ分布の場合、過去のデータに基づく平均や標準偏差はあまり意味を持たない。また『異常』な現象が起きる確率が正規分布の場合よりはるかに高くなる。(中略)株価や為替レートの変動がベキ分布に従うことは今や広く知られている。残念なことに巨大地震や津波、洪水などの規模もベキ分布に従うのである。大天災の確率分布がベキ分布というのは、何ともやりきれないことだが、これは20世紀の科学が明らかにした事実である。ベキ分布の教訓は、想定外と言わないですむように、念には念を入れた想定を置かなければならないということだ。」

 正規分布とベキ分布については、内閣府が編纂した平成20年版『国民生活白書』のコラムでも取り上げられており、抜粋して紹介したいと思います。


 「正規分布とは、ある標本集団のばらつきが、その平均値を境として前後同じ程度にばらついている状態を示し、これを表した分布図で見ると、平均値を線対称軸とした左右対称の釣鐘型でなだらかな曲線を描く。つまり、平均値の周辺にサンプルが多く集まり、値が大小の左右の裾野に向かうとサンプル数が急激に減る。一方、ベキ分布とは、極端な値をとるサンプルの数が正規分布より多く、そのため大きな値の方向に向かって曲線は長くなだらかに裾野を伸ばしていく。これまで正規分布は統計の基礎となり、特に、経済学が数学モデルを作る時に使う確率分布には自然科学の分野で考案されたこの正規分布が多かったが、近年の経済物理学の研究から、経済現象の多くは正規分布ではなくベキ分布に従っていることが判明している。例えば、所得や純資産などの富の分布や株価などの価格の変化といった経済現象は正規分布ではなく、ベキ分布に従うことが分かっている。ベキ分布は確率分布の一つに過ぎないが、正規分布では起こりえない事象が実際にはある程度の確率で起こってしまう(不確実性の)問題を考える上で、有効なツールと考えられている。」

 

normal distribution & power distribution

<出所>平成20年版『国民生活白書』

 

 広域複合災害となった東日本大震災(旧東北地方太平洋沖地震)を受けて各地方自治体では、地域防災計画の見直しを急いでいますが、想定を超える被害に対応すべく根本的な練り直しを迫られています。天災地変や原発事故に対する備えは、4つのプレートが犇めき合う地震・火山大国であり、四方海に囲まれた島国である日本の国家としての脆弱性と国民意識など安全保障・危機管理上、常にベキ分布を考慮して講じていかなければならないことを、東日本大震災の教訓として肝に銘じるべきであると痛感します。

共通番号制度

民主党政権が2011年6月の大綱策定を目指す「社会保障と税に関わる番号制度(共通番号制度)」は、情報技術(IT)化が進む現代社会において個人情報やプライバシーを如何に保護するかが議論の焦点となっています。

 

共通番号制度は、「住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)」を活用し、11桁の住民票コードと年金・医療・福祉・介護・労働保険の各社会保障分野及び国税・地方税の各税務分野の管理番号を連携させ、社会保障と税に共通の番号を国民一人ひとりに割り振る制度です。社会保障と税を一体化することにより、正確な本人確認(公的認証)と効率的な行政サービスを提供することが狙いです。ただ、共通番号制度には、氏名・住所・生年月日・性別の基本4情報だけで番号を割り振る住基ネットと比べて病歴・納税額などプライバシー性が高い個人情報も数多く含まれ、情報の流出や漏洩、目的外利用が起きないか等、国民の不安を増幅させることが予想されます。また、個人情報保護は、都道府県や市町村など地方公共団体の条例も分担しており、地方公共団体の理解が得られない共通番号制度であれば住基ネット導入時と同様に不審を抱かれることも予想されます。

 

住基ネットの仕組み

 zyukinet

<出所>総務省

 

共通番号制度では、インターネット上に共通番号と情報連携基盤が紐付けされたマイ・ポータルを設置し、国民が個人データ(自己情報)へのアクセス記録を確認できる仕組みを構築したうえ、個人データが流出や漏洩した際の罰則の強化、そして目的外利用・提供の制限を施します。また、海外では、独立した第三者機関である“データ保護・プライバシー・コミッショナー”と呼ばれる専門組織が公平で中立な立場から個人データを監視し、官-民と民-民の取引を調整する機能を併せ持つことが一般的です。日本でも会計検査院のような他の行政機関から分離・独立した組織が監視することが共通番号制度導入の前提条件となるでしょう。ただ、第三者機関の監視機能や権限の及ぶ範囲が曖昧なまま強大化されれば共通番号制度を濫用して国民総背番号制度とし、国家統制に至る可能性が危惧されます。

 

 chart_position(拡大表示)

<出所>会計検査院

 

共通番号制度導入に伴う新たな方策を、特別法として現行の「個人情報保護法」に上乗せする形を取りますが、そもそも個人情報の利用と保護の両立を謳う同法の目的が誤解されがちであり、共通番号制度の基本となるべき同法の体系自体に過剰反応があるなど日本特有の課題を抱えています。また、個人情報保護法制定時に、個人情報の流出や漏洩が深刻なプライバシー侵害となり得る医療・金融・情報通信の3分野は別途、法規制が必要とされながら見送られてきたにも係わらず、今回の共通番号制度では、これら分野(実際は、医療と金融の2分野で、何故か情報通信分野は含まれていない)が個人情報を共有するという理由から俄かに法規制される見通しです。

 

個人情報保護法の体系イメージ

taikei

<出所>消費者庁

 

 民主党政権は、2011年2月24日から先走って共通番号制度の名称を募集し始めましたが、今後の展開次第では、第三者機関の設置をはじめ共通番号制度の導入が方便に終始するか、それとも個人情報やプライバシーの保護確立に結実するか、大きな分岐点を迎えることとなります。国民社会生活に大きく影響する共通番号制度の導入を拙速に進めるべきでなく、国民的議論や合意形成も不十分である以上、時期尚早であるように感じます。

コンピュータ監視法案

2011年に入りチュニジアで起こった民主化運動・反政府デモに端を発し、近隣のエジプトやリビアへと飛び火、更に北アフリカ地域からバーレーンやサウジアラビアなど中東地域に政変が拡大する様相を呈しています。一連の出来事では、不特定多数の人々が時間と空間を超えて相互に情報共有する交流サイト「フェイスブック(Facebook)」など社会的ネットワーク(人同士の繋がり)をインターネット上で構築するサービス「ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)」の威力を世界がまざまざと思い知らされました。

 

2011年1月24日に召集された第177回通常国会提出を目論み民主党政権が準備している「コンピュータ監視法案(情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案)」は、コンピュータに係る「ウイルス作成罪(不正指令電磁的記録に関する罪)」の疑いで警察など捜査機関が取り締まる必要がある際、裁判所の令状なしにプロバイダー(インターネット接続業者)にログ(通信履歴)を一定期間(上限90日間を想定)保全(消去せずに保存)するよう要請できる制度です。

 

 コンピュータ監視法案では、ウイルス作成罪の要件が曖昧で“疑わしきは罰せず”の原則に反し、リモート・アクセス(遠隔操作)によって通信回線で接続されたコンピュータの膨大かつ広範なデータ(電磁的記録媒体)の差し押えが一網打尽に認められ、ログの保管を容易にするため、その保全を警察など捜査機関がプロバイダーに要請することができる等、国民のプライバシーや通信の秘密が侵害される致命的な欠陥を抱えています。

 

ログ保全要請によってメールの場合、発信者・受信者、通信日時、どのような回線経路で通信が行われたか、どのようなメールソフトを使っているか等が分かります。また、ウェブページ(ウェブ上にある個々の文書)の場合、どのウェブページを閲覧したか等が分かり、ブロードバンド(高速通信回線)で常時接続の場合には、かなりの確率で使用しているコンピュータを特定することも可能です。

 

警察など捜査機関がログを入手する方法としては、コンピュータ監視法に基づいてプロバイダーにログを保全させる正攻法のやり方のほか、ログは任意提出といいながらも国家的お墨付きを与えられたコンピュータ監視法の協力義務規定を根拠としてプロバイダーから半ば強制的にログを押収し、保管するやり方です。警察など捜査機関を取り締まる第三者機関がない以上、警察など捜査機関が適法な範囲を逸脱しても処罰されることを免れ、警察など捜査機関自身の権限を強大化しようと監視体制が行き過ぎた方向に進む恐れがあります。そして、インターネットが規制され、警察など捜査機関が特別高等警察(秘密警察)の如く自由な言論・表現活動を脅かして最終的に思想弾圧に波及する恐れもあります。

 

コンピュータ監視法案を取り纏める立場にある江田五月・法務大臣は、2011年1月15日の閣議後記者会見でコンピュータ監視法案について問われ、「これは、ちょっと勉強不足で何ともお答えできるほどの私の見解を持っておりません。我々の世代になりますと、それは何語ですかというところもあって、私自身は極力インターネットにもアクセスしたり、あるいは自分のホームページも活動日誌を毎日更新等しておりますが、それでも何か片仮名が飛び交うと頭がくらくらするのでしっかりと勉強させてもらいたいと思います」と発言し、民主党政権の閣僚として国家権力の中枢に居座りながら事の重大性を全く理解しておらず認識の希薄さを露呈しました。

 

日本をはじめ欧米など主要30ヶ国が署名し、2001年に採択された『サイバー犯罪に関する条約』を拠り所とするコンピュータ監視法案は、日本国憲法の第21条に規定されている「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない」、或いは日本国憲法の第35条に規定されている「捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない」に抵触し、「人権侵害救済機関設置法案(旧人権擁護法案)と同様に私人である一般の日本人を国家統制し得る“平成版治安維持法(治安警察法)”と呼べ、天下の悪法であると考えます。

参議院選挙制度改革

 総務省は2010年12月24日、同年9月2日現在の選挙人名簿登録者(有権者)数を公表しました。都道府県を単位とする参議院選挙区の議員一人当たりの有権者数は、神奈川が122万2455人で最も多く、鳥取の24万3254人が最小となっており、最大格差が昨年の4.99倍から5.03倍に拡大したことで「一票の格差」が更に浮き彫りとなりました。

 

sangiin kakusa

<出所>総務省自治行政局選挙部管理課

 

 2010年7月に行われた第22回参議院議員通常選挙(参院選)で最大5倍だった一票の格差を、11月に東京高等裁判所が「違憲(法の下の平等を謳う日本国憲法に違反)」、12月に広島高等裁判所が「違憲状態」とした判決を受け、参議院では12月22日、西岡武夫・参議院議長が一票の格差是正に向けた選挙制度改革試案を提示しました。西岡議長試案では、参議院の都道府県単位の選挙区を廃止して比例代表に一本化、全国9ブロック単位に人口比例で議員定数を12~44に配分し、議員総定数を現行の242に据え置くとしています。9ブロックの比例代表には、各候補の当選順位を政党が予め決定しない非拘束名簿式を採用すれば最大格差が1.15倍に収まるということですが、これでは無所属の個人立候補が難しく、日本国憲法で保障された参政権に抵触する恐れがあり被選挙権の制約に繋がりかねません。また、改選定数1の人口が少ない地方選挙区選出の民主党所属参議院議員有志から「一票の格差是正によって9ブロックで選ばれる議員が人口の多い都道府県に偏り新たな地域格差を生む」との疑問を呈する声も澎湃と湧き起こっています。

 違憲判決で危機感が募る与野党でも独自の参議院選挙制度改革案の検討を進めており、西岡議長試案を議論の叩き台とする考えです。参議院の与野党各会派の代表者で作る「選挙制度の改革に関する検討会」は、2013年に行われる次期参院選からの適用を視野に選挙制度改革案を取り纏めることで合意しており、2011年1月に召集される通常国会で関連法案の成立を目指します。ただ、埋没を恐れる中小政党の公明や社民、共産各党で議員定数削減に反対が根強く、参議院選挙制度改革案の段階的な意見集約過程で百家争鳴(賛否両論入り乱れての紛糾)が避けられず、調整難航は必至の情勢と見られ、今後の紆余曲折が予想されます。

 

参議院選挙制度改革に関する検討状況

◇西岡参議院議長試案<叩き台>

選挙区廃止、比例代表9ブロック(議員総定数:現行242)

◇民主党

選挙区廃止、比例代表11ブロック(議員総定数:200)

◇自民党

2011年3月までに具体案提示(議員総定数:3年後に衆参両議院全体で1割削減)

◇みんなの党

選挙区廃止、比例代表9ブロック(議員総定数:100)

 

【補足】西岡議長試案の9ブロックは、北海道、東北、北関東・信越、南関東、東京、中部、関西、中国・四国、九州・沖縄です。ブロックの内訳を衆議院の比例代表と比べると、人口が少ない中国と四国を一本化して「中国・四国」とし、北信越をなくします。北信越のうち長野と新潟は北関東に編入して「北関東・信越」、石川と富山は東海に編入して「中部」、福井は近畿に編入して「関西」となります。また、埼玉を北関東から南関東に移します。民主党の11ブロックは、衆議院の比例代表と同じブロックで地域代表の色彩を残す案、自民党に米国上院をモデルとした都道府県単位の選挙区を残すべきであるという意見があります。

 

 現行の都道府県単位の選挙区割りが地域の多様な意見を反映させる方法として不合理とは思えませんが、日本が民主主義国家である以上、鳥取の1票に対して神奈川の0.2票では、投票価値に著しい不平等が生じていることを免れず、漫然と現行の参議院選挙制度を維持するのではなく、可及的速やかに格差是正措置を講じることが肝要です。一票の格差を是正して議員総定数を据え置く西岡議長試案では、中小政党が台頭し易く、一党単独で過半数の議席を確保することが難しいことから、連立の枠組みや政策毎のパーシャル(部分)連合など模索しながら臨機応変に柔軟な舵取りができるかが鍵となります。党の消長と議員の政治生命に直結することから利害が複雑に絡み合い参議院選挙制度改革を先送りしていることを、最高裁判所が立法機関である国会の怠慢と指弾し、再び違憲と断じれば「選挙無効」という前代未聞の事態になりかねないことから、これ以上の停滞は許されず抜本的な参議院選挙制度改革が焦眉の急といえるでしょう。

 

 そもそも“良識の府”や“再考の府”と呼ばれる参議院の在り方を憲法改正も視野に見直す必要があります。個人的には、参議院を各分野で専門性を有したブレーン的な政治家集団とするための「博識院(仮称)」に衣替えするべきであると考えます。国政選挙を経て国民や地域の代表として民意を反映する衆議院と、衆議院の知恵袋のような機知に富んだ人材を衆議院の獲得議席数に応じた比例配分で与野党や諸派・無所属が指名登用する博識院との二院制とし、内閣を組織して政権運営の責任を負う両院で国会を相互補完します。衆議院については、コスタリカ方式や選挙区で落選した候補者が惜敗率で復活当選するような比例代表を廃止し、“風”次第で大勝にも大敗にもなり得る「小選挙区制」から死票(当選者以外に投じられた票)が少なく民意が反映され易い「単記移譲式投票(優先順位付き連記投票)」の導入を視野に「単記非移譲式投票の大選挙区制(中選挙区制)」に戻す等して国会議員定数(衆議院480・参議院242)を半減(衆議院260・博識院100)することを提案したいと思います。

 

【追伸】明けましておめでとうございます!本年も何卒よろしくお願い申し上げます。2010年は、7月に参院選を経験するなど私の人生で最も有意義かつ激動の一年でした。生まれ育った奈良県で大勢の方々に支えていただいたことを心より感謝しております。また、『衆ノ雑感』山田衆三のブログをご閲覧いただいた皆様、貴重なご意見や熱い応援のメッセージをいただいた方々、本当にありがとうございました。2011年は「年男」ですので、兎の如く跳ね回り、餅の如く粘り強く、もっと愛する祖国・日本のために貢献できる人間になりたいと考えております。では、皆様にとって素晴らしい卯年となることを祈念しております。

 

usagi

月別アーカイブ
プロフィール
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ